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[2008年02月23日] ネットでの匿名と戦争放棄

「弁護士の小倉秀夫氏に聞く ネットでの誹謗中傷問題(中)
実名を使うのが基本 それがネットをよくしていく」について
(http://www.j-cast.com/2008/01/20015383.html)


- 小倉弁護士はネットでの実名を提唱
> 情報を発信する以上、そこに社会的人格が結びつく必要があり、
> プロバイダーか、発言者か、誰かが必ず責任を負うべきだということです。

実名を推進する彼は「卑怯な匿名者」と、不自然な日本語で匿名者を罵倒する一方で
(私からすると)意外な事に、彼のBLOGでは匿名での発言を許容しています。
もし匿名自体が卑怯な行為であるなら発言を許す必要は無いはずです。
「卑怯な匿名者」を「卑怯である所の匿名者」と解すと、この行為は矛盾しますから、
本当は「匿名者の中の卑怯者」と理解すべきなのかもしれません。
| 実際には2007年2月27日より「コメント欄の管理に時間をとられるのも大変」
| 「「荒らし」コメントは削除した方がよいとのアドバイスを頂きました」
| との理由?で
| 「どこの誰であるのかを私(小倉さん)が認識している方からのコメント以外」
| のコメントを許可しない事になっているようです。
| (http://benli.cocolog-nifty.com/la_causette/2007/02/post_5dbb.html)
(2008/05/09追記)

- そもそも何が卑怯なのか。
彼が何を「卑怯」と感じたのかと言えば、前述の通り匿名である事ではありません。
きっとそれは「匿名(で『自分』を批判する)者」の事です。
彼にとっては例え匿名であっても『自分』を評価する者は「卑怯な匿名者」では無いはずです。
実は彼が問題にしているのは『匿名』ではなく『評価』なのです。

ネットでの匿名実名の議論においての最大の不整合はここにあります。


実名主義者は、小倉先生が
> 匿名中心では、現実社会の地位をアップさせる手段としてネットを利用しにくくなります。
と主張する様にネットを「地位アップ」の為の場と見ているのに対し、
匿名を主張する人間は「情報交換」や(純粋な)「議論」の場と考えている様に思います。
前者はネットで『敵(ライバル)』を蹴散らし「地位アップ」を果たそうとするのに対し、
後者はネットで『仲間』と「情報交換」や「議論」をするのです。
果たして卑怯な「情報」や卑怯な「議論(主張)」は存在するでしょうか?
卑怯『者』と言う様に、卑怯と言う言葉は相手の人(格)を攻撃しているのです。

例え「卑怯者」でも真っ当な主張をする事もあるでしょう。
本当に議論をするつもりなら「卑怯者」であるかどうかではなく、主張の内容を指摘すべきです。
彼はITやネットの『専門家』かもしれませんが、ネットに慣れていません。
彼はネットを自分の「地位アップ」の場としか考えていませんから、否定的な評価を
(例えそれが「バカ」や「うんこ」等の批判者側の人格が疑われる様なものであっても)
許せないのです。


- 先生の主張は破綻している
ただ、私は先生の主張は破綻している様に感じます。
なぜ「現実社会の地位をアップさせる」事を実社会ではなく、わざわざネットで行うのかと言えば、
実社会においては「地位」によって発言を『選別』される一方、ネットでは先入観を持たれず
(実社会のエスタブリッシュメントによらず)純粋に発言内容によって評価されるからだと考えます。
ネットを実名にすれば、実社会のエスタブリッシュメントをネットに引き込む事になります。
実名にする事は実社会の『先入観』をそのままネットに持ち込む事になり、
ネットのメリットを失わせる事に他なりません。


- ネットの実名化は無名者の活躍に資するのか
>(現在の実名と匿名とが混在しているネットの状況は)
> 若くて才能ある人が才能を発揮する場を狭め、現在社会的に高い地位にいる人にとっては好都合になります。
> 今は、モラルに反する状態が続いていますので、実名制によってネットをよくしていこうということです。
私はこれは逆であると考えます。全員が匿名であれば「現在社会的に高い地位にいる人」である事は
判りませんから無名である事のデメリットは無くなります。むしろこれは実名を名乗る事の弊害なのです。
実は実名を名乗りたいのは「無名な人」ではなく先生の様に「有名な人」が評価を上げようとする場合か、
もしくは社会的に高い地位にいる人が自分の『地位』を基に自分の主張を通そうとしている場合がほとんどです。
これらは、純粋な議論にはむしろ排すべき事項です。それに本当に無名な人は
名乗る名を持ちませんからハンドルネーム(ペンネーム)でも支障は無いはずです。


- ネット上で実社会のエスタブリッシュメントを示すメリットは存在するか
> ある発言を取っても、医者が言ったと分からないと、正しいか判断しにくい。
実生活においても「自分は医者だ!」と言う人が本当に医者であるかどうかは判りません。
(警察手帳の様に医師免許を持ち歩いている医師がいるとは思えませんから。)
一方で医者ではない人物が医者を名乗る事は、刑事罰の対象になります。
ネットもこれで充分ではないでしょうか。

それに真っ当な医者なら、実際に会って(診察)もしていない人に診断などしないはずですから、
私なら、ネットで診断めいた事を言う人は(それが医者であろうとなかろうと)信用しません。
医者であるかどうか以前に、そもそも信じてはいけないのでは?


- 裁判は『脅し』となり得る
彼のスキームでは、最終的には「ネットでの『卑怯な』行為は実社会で清算(裁判)すべき」
と、ネットの上位に存在する「実社会」を前提とします。

実際問題そのとおりですし、もちろん「裁判」は合法ではありますが、
一般人と法曹関係者とでは裁判に掛かる『コスト』が違いすぎるのです。
弁護士であれば自分自身で弁護することさえできますが、一般人の場合は自分で弁護出来ないばかりか
そもそも頼むべき弁護士の「つて」さえ無いのが実状です。周囲に「訴えられている」と知られた時点で
偏見により社会的な制裁を受ける事もあり得ます。
このように、裁判の結果以前に裁判と言う行為自体「嫌がらせ」と感じるのです。
法曹関係者が「裁判」と言う言葉を発する事は一般人に対する合法的な一種の『脅し』になります。

この様に実名を明かす事は、ネットで実社会のエスタブリッシュメントをちらつかせる事にもなります。
「私は弁護士だ。裁判がし易いように議論の前に、まず名を名乗れ!
卑怯な事をするつもりが無いなら、名乗れるはずだ」と。

何ら法律上問題はありませんし、確かに間違った事は言っていません。でも、
果たしてこれで弁護士先生に言いたい事が言えるでしょうか。
私には先生の主張がこの様に聞こえます。


- 実社会での『脅し』
私は小倉弁護士が意図的に『脅し』として「裁判」を主張されているのでは無いと考えますが、
一方でこの事は実社会においても『無自覚な脅し』をしている可能性について自覚していない事を示します。

同様な事項として「私は暴力団に知り合いがいる」や、果ては「私の夫はジャーナリストだ!」等と言って
病院での便宜を要求したと言うニュースも聞いた事があります。
一般人にとって「私は弁護士です」も同じ様な意味を持つのではないでしょうか。

裁判をスポーツに例えるなら、裁判は裁判官なる審判の前で行う『勝負』です。
例え『ルール(法律や制度)』や『審判(裁判官)』が公平であり、
弁護士なる雇われコーチがついたとしても、プロの選手と素人とが戦っても『勝負』は見えています。
私は個人的には、法曹関係者は民事裁判を提起出来ないようにすべきと考えます。
こうすれば、法律の専門家達は何でも自分達に有利な『方法(裁判)』で『勝負』をしようとせず、
裁判をせずに物事が解決出来る様な仕組み(法律)作りに知恵を絞るのではないかと思うからです。


- ネットでは実名こそを禁止すべき。
ここで私は逆にネットでは実名の方を禁止すべきと主張してみます。

完全に実社会と切り離された「ハンドルネーム」に対する誹謗中傷は、
果たして名誉毀損に当たるでしょうか?私はあたらないと考えます。(『信用毀損罪』?)

ネットにおける名誉毀損の前提条件として「個人情報の開示」が存在するのではないでしょうか。
とするなら、先生の主張とは全く逆にネットにおける一切の個人情報の開示を禁止すべきです。

ネットでの問題を民事裁判の様に相手を指定して訴えると言う形ではなく、
刑事事件の申告罪の様に被害事実を提示するだけで警察が動くのなら、
被害者の負担は軽減します。

ネットにおける「個人情報の開示」自体を刑事事件としてしまうのです。
これとは別にマスメディアに於いてもネットではニュースの被害者や加害者の氏名等を一切禁止して、
他のメディア(新聞やテレビ、ラジオ)との差別化を図ると言うのも一考に値すると思います。
私は犯罪者の氏名の公開は社会的制裁以外(知る権利等)の意味は存在しないと考えますし、
氏名の開示が無くともニュースとしての価値が損なわれるとは考えません。


- 上位構造の存在
ネットの問題をネットの中だけで解決しようとするのか、それともその上位構造(実社会)を前提に
解決(裁判)する事にするのかは、外交において「戦争を放棄する」のか、
「あらゆる選択肢(戦争)を放棄しない」と言う立場を取るのかの違いにも通じます。


- 戦争放棄は可能か?
私は、「あらゆる問題を話し合いによって解決できる」かどうか(戦争不要の可能性)の『実験』として
もう少しネットの問題をネットの中で解決出来るか『足掻く』のも必要だと考えます。
当然の事ながらネットにおける犯罪は実社会の法律で処罰されます。
ただ、それ以外の事に関してはできるだけ話し合いで解決すべきです。


- 最後に
才能を示すのにネットを使うのは歓迎しますが、
現在実名を名乗る人は名を上げよう(もしくは実社会のエスタブリッシュメントを利用しよう)との
意図がある場合が多い様ですから、特に名誉(毀損)に敏感であると思います。
実名化により裁判がし易くなって、彼らが今以上に裁判をちらつかす事にでもなれば
議論も情報の共有も非常に難しくなります。

戦争の結果は物事の正しさとは関係ありません。
同様に名誉毀損であるかどうかは議論の本質とは無関係です。
ネットを「争いの場」ではなく「話し合いの場」や「情報の共有の場」とするためにも
実名(特に強制的な実名化)には反対します。



最後に小倉先生、私も匿名ですが裁判は勘弁してください。
これは先生を貶める目的で書いたものではありません。
ご理解のほどおながいします。



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